君色キャンバス




「紗波は、虐待の事で、ある言葉のトラウマができた…」



小百合が話していくのを、無言のままで聞く。



「…『天才』って言葉のトラウマ。この言葉を聞くだけで、身体が震え出して、酷い時には自虐をするの。それに値する事をね…」



「自虐に値する…どんな事だよ?」



祐輝が、単刀直入に問う。



その答えを、小百合は震える声で言い放った。



「…絵を、塗り潰す」



祐輝は目を見開いて、四階にある美術室を中庭越しに見上げた。



背中に、戦慄が走った。



雨がまた、激しくなったようだ。









「中一の時はね…光と紗波は、互いを知り合って無かった。…いや、光は知ってたか…光はお金持ちのお嬢様だから、常に成績優秀じゃないと気が済まないの。…だから、学年一位から突き放された二位じゃ、満足できなかったんだ…」



小百合の声が、一段ずつ階段を下りる様に、暗くなっていく。