そんな風に笑わないで。

ボクが欲しいのは、もっと嬉しいにっこりで、しゅんとしたにっこりじゃないんだから。

驚いた顔でボクを見るサユちゃんに、大きな声を投げつけた。


「泣いてったら!」


すると、サユちゃんの目からぽろりと一粒、涙がこぼれた。

それはとってもきれいで、ボクは少しの間見とれてしまった。


「あー、サトルくんが、サユちゃん泣かせた!」


そのうちに、ユナちゃんが騒ぎ出した。
そしたら、先生や他のお友達が集まってくる。


「あら、どうしたの。サユちゃん大丈夫?」


先生が来て、サユちゃんの前にしゃがみこむ。

サユちゃんは慌てて涙を拭こうとするから、ボクは慌てた。

ダメだよ。
先生、なぐさめちゃダメ。

サユちゃんは、泣きたいんだよ。
大人のくせに、そんなことも知らないんだ。


「ダメ、サユちゃんをなぐさめないで!」


ボクは先生とサユちゃんの間にはいりこんだ。
サユちゃんはまだ涙を流したまま、ボクの方を驚いたように見ている。


「サトルくんが、泣かせたの?」

「そうだよ!」


ボクは先生をまっすぐ見て言った。