…信じてたよ、私だって。

慎ちゃんがいれば、何もいらなかった。

慎ちゃんさえそばにいてくれたら、生きていけた。

…なんて。

それだけは、嘘じゃなかったから。

私達はこの先ずっと、一緒にいるんだろうって。

…信じて、疑わなかったよ。


慎ちゃんは私を見つめて、静かにテトラポットから降りた。

ザク、と砂浜が音を立てる。

慎ちゃんの黒髪が、風に揺れる。

彼は俯いて、「…俺は」と言った。



「利乃のこと、好きだった」



…知ってる。

もうずっとずっと前から…知ってるよ。

「…うん」

「誰よりも、大事だった」

「…うん。でも、私より好きな人、できちゃったんだよね」


彼の手のひらが、きつく握りしめられる。

…慎ちゃん。

私は目を細めて、彼を見つめた。