利乃が『慎ちゃん』と呼ぶ。

その言葉のなかに、一体どれだけの想いがつまっているんだろう。


「俺は、ずっとこのふたりは一緒にいるんだろうなって思ってた。…けど中学卒業して、慎也が東京に行くことになってさ。びっくりするくらい、すんなりふたりは離れたんだよ」

…すんなり。

利乃は、戻ってきた慎也を嬉しそうに迎えていた。

仲が良かったからこそ、慎也のことを考えて送り出したってこと?

…あれ?

でも転校してきた日、教室へ入ってきた慎也に、利乃はとても驚いていた。

…『まさか一年で帰ってくるなんて、思わなかった』って。

そうだ。それで、『連絡取り合ってなかったの?』って、訊いたら。


『連絡先、聞くの忘れちゃっててさ。手紙とかはやりとりしてたんだけどねー』


…依存なんていうほどの関係なら、普通、連絡先を聞き忘れることなんか、ない。

連絡先は聞いてなくても、手紙はやりとりしてたの?

…それってなんだか、おかしい。


おかしいよ、利乃。


心の中が、ざわざわと騒ぎ出す。

利乃の言葉の、どれが本当でどれが嘘なのかわからない。

眉を寄せて考え込むあたしに、トモは「…わかんないよな」と言った。