…ねえ、変だね。

触れた手から伝わる温もりに、『恋するオンナノコ』は、ドキドキするものなんでしょう。

嬉しくて、浮かれちゃうくらいに喜んでしまうものなんでしょう。

…でも、今彼に手を引かれて歩くあたしの心は、喜んでなんかいないんだ。


苦しいほど胸が痛んで、やるせないほど切ない。


…こんな感覚、初めてで。



「……慎也」

河川敷へと続く道を歩きながら、彼の背中へ声を掛ける。

「…ん?」

何気ない風で振り返った彼に、あたしは眉を下げて笑った。


「あたし、今すっごい楽しい」


泣いてしまいそうになのを、必死に隠して。

彼もそうだといいと、思いながら。

重なった手を、ぎゅっと握り返した。

慎也はあたしをじっと見つめて、そして…笑った。


「…なら、俺も楽しい」


好き。

……ごめんね。

君の苦しさも、視線の先も。

なにも知らない、あたしだけど。

好きだよ、どうしようもなく。


……あたしだって、好きでどうしようもないんだよ。