「セイは普段ワガママ放題だから、人の心配するなんて信じられないかもだけど」

 思い出したように薄く笑うと、王子はまた窓の外に目を向ける。

「ただの寝不足だから、知紗も心配しないで」

「う、ん」

 アカツキの横顔は、とても静かだ。

 教室にいるときみたいに不自然な笑みを張りつけていない。表情筋に何の力も加わっていない、素の顔。

 これが本当のアカツキなのかな、と思った。
 普段どことなく漂っていた作り物っぽい雰囲気が、今の彼からは感じられない。

 微笑み王子なんて呼ばれているけど、アカツキって本当は――

「着いたよ」

「え」

「俺んち、ここ」

 アカツキが窓の外を指さしたとき、後部座席のドアが開いた。