「さっさと乗れよ!傷…以外と深いんだろ?歩けねぇなら、おんぶしてやるよ。…。遅くなるとアイツらが五月蝿いしな。しかも鬼がどこにいるかもわかんねぇし。それに……」
俺はペラペラと喋っていたが、次の言葉を口にしようとしたとたん『……お前が心配だし』と、小さく呟いた。
そう言い終わった後、すぐに顔を伏せた。
恥ずっ───
そう思いながら結美が乗るのを待った。
そして、数分たって結美が俺の背中に乗った。
それを確認した後、ゆっくりと立ち上がった。
そのとき、ふいに『軽い……。ちゃんと飯食ってんのか?』と思いながら歩き出した。
ゆらゆらと結美の髪の毛が俺の頬や鼻をかすめた。
鼻をかすめた時に、とてもいい香りが鼻の奥まで届いた。
これが……結美の香り───
そう思ったとたん、顔が突然赤くなり、胸がバクバクと大きく動いた。
俺は結美に赤い顔を見られないように下を向いて隠した。
だけど、一向に胸の大きな音は収まらない。
結美に気づかれないだろうか───。
そんなふうに思いながら俺はゆっくりと家に帰った。
【正汰side終了】

