『真面目な話しだから、寝ぼけてないでちゃんと聞いて。
大ちゃんが居なくなっちゃったんだよ。
急に置き手紙を残して……
連絡も断って、どこに行ったか分からないんだ。
それで紫ちゃんは……』
「流星が…?
どこ行ったんだアイツ?」
『だから分かんないって言ってるじゃん!馬鹿!!
頼むよ…早くこっち来て。
僕じゃ、紫ちゃんを支え切れない……』
「紫……」
オカマから詳しく聞いた話しを整理すると、こう言う事だ。
流星が『身勝手な事情』とか、訳分かんねー事書き置いて居なくなり、
荷物は勝手に引越しさせられていた。
紫はショックを受けても泣かねーし、
「大丈夫」とか言って、一晩経ったら、様子がおかしくなっていた。
今朝はヘラヘラ笑いながら、流星の為にだし巻き玉子を作ってる……
詳しく説明されても、そんな状況、すんなり飲み込めねぇ。
まず納得できねーのが、流星が紫から離れた事。
そんなの有り得ねーだろ。
納得できねぇけど、それが事実だって言うなら、何でだ?
『身勝手な事情』って何だ?
アイツ…「自分の命には期限がある」とか言っといて、何で紫と過ごせる時間を無駄にする?
分かんねぇ…
マジ分かんねぇ。
けど…紫のその状態はヤベェな……
ヘラヘラ笑って、だし巻き玉子かよ……
紫は俺と違い、商売上作り笑顔は得意な奴だ。
客に対しては、いつもヘラヘラ笑っていやがる。
けどな、俺の前ではそんな嘘くさい面で笑ったりはしねぇ。
流星とオカマの前でも、きっとそれは同じだ。
流星のバカ野郎がいなくなっても、オカマの前で泣かずにヘラヘラ笑う紫…
想像したら背筋が寒くなった。
怖えーな…それ……
紫…ヤベェ…