私と流星と大樹、
3人の関係は、落ち着くべき所に落ち着いたと言え、
何のわだかまりもなく、笑い合える訳じゃない。
母は「連れておいで」なんて簡単に言うけど、
流星と大樹が目を合わせる度に、ハラハラしてしまう……
それと、1ヶ月もうちに住まわせるのも心配。
母はいいとしても、父が…
柏寮が女子寮じゃない事は、階段を落ちた日にとっくにバレている。
それを隠していた事について、まだお咎(トガ)めがないから、
帰省時に何か言われるんじゃないかと、不安な気持ちがある。
そこに寮の仲間を連れて帰って泊まらせるって…大丈夫かな…?
父は優しい親バカだけど、何でもかんでも甘い訳じゃない。
息子みたいな大樹が、交際宣言した去年とは違う。
忙しい父は5年…いやもうすぐ6年前になるあの夏、流星との接点は殆どなかった。
つまり、「久しぶり」と言うより
「初めまして」と挨拶した方がいい様な関係。
可愛い娘に近付く良く知らない男…
そうそう簡単に、流星を認めてくれるとは思えない…
不安が一杯だけど、母に言われたので仕方なく、アルバイトの話しを2人に切り出した。
アルバイトをお願いしながらも、本心では「無理だよ」って断ってくれる事を期待していた。
お店の人員不足は困るけど、不安要素が多過ぎる。
断られたなら、無理に連れ帰る訳にいかないもんね。
しかし、私の思惑とは裏腹に、2人は快諾してくれた。
瑞希君は…
「行く行くー!
夏休みに学校にバレない所で、バイトしようと思ってたから調度いいよ。
紫ちゃん家かー、面白そうじゃん!」
とやる気満々で、
流星は…
「いいよ。紫の帰省に付いて行くのに、君だけ働かせて俺は遊んでるって言うのが気になっていたんだ。
給料は要らない。
俺の方から働かせて下さいと頼みたいくらいだからさ」
母が喜びそうな、無給発言まで飛び出した。