縛鎖−bakusa−

 


私は横に立つ水谷徹を見た。

彼女からすれば何もない空間に視線をじっと止めている…

そう見える事だろう。




「水谷徹、どうすんの?この人返す気ないみたいだよ。

体の中に入っちゃえば?

潤一先輩にした様に、苦痛の末に気絶させて、奪い返せば?」



『ダメ…それじゃあ満たされない。

この女が自らノートを公表する気にさせないと…

恐怖に突き動かされ…自分の手でノートを出さざるを得ない…

そんなザマにしてやらないと…』



「そう、分かった」





水谷徹はニィィッと笑っていた。


重たい鎖を引きずりながら彼女に近付いて行く。



彼女には水谷徹の姿は見えていない。

引きずる鎖の音も不気味な声も聞こえていない。



けれど彼女は体をびくつかせる。


私の言葉に慄き、

彼を追う私の視線の移動に恐怖している。