縛鎖−bakusa−

 


「ノートは?…水谷徹の最後のノートは?」



私がそう聞くと仏花の花束がバサリと床に落ちた。



花束は落としたけど、ショルダーバックは離さない。

胸に抱きしめる様な格好で彼女は震えていた。



そう…

持って来てはいるんだ…良かった。




「あああ、あなたは一体…

どうしてノートの存在を?…

あなたは誰?水谷君の何…?」



「私はただの女子高生です。人と違うのは…見えている事だけ。

見えるんです…水谷徹の姿が。

黒い詰め襟の学生服を着て足首に鎖を巻き、学校から離れられずさ迷う彼の姿が。

彼は言っています。クヤシイと…

自分を死に追い詰めた加害生徒達を恨み…

ノートを無い物としたあなたを恨み…

負の感情がこの学校に彼を繋いでいる…

山本先生、彼はここにいますよ。

そのバックに入っているノート、返して下さい」




彼女は震えながらもバックを抱え込んだまま首を横に振る。



まだ返す気にならないの…?

もう少し恐怖が必要みたいだね……