一人ぼっちの今、人が多い場所でお握りを食べる気にはならなかった。
どこに行こうかと考え「旧校舎」が頭に浮かぶ。
あそこがいい。旧校舎は空き教室だらけ。
クラスとしての使用はなく、科学室物理室、生物地学…そんな専門教科の部屋があるくらい。
人の流れと逆行して旧校舎に向かう。
新校舎と旧校舎は渡り廊下で繋がっている。
人気のない渡り廊下を歩くと、雨の音と匂いを強く感じた。
今日は朝から雨だ。空気が蒸し暑く不快。
渡り廊下から旧校舎へ繋がる重たい風除扉を引いて開け、
中に足を踏み入れると、空気が澱んで更に不快な気分になった。
誰も居ない古い廊下をヒタヒタと歩く。
辺りは早朝か夜に入る前の様に薄暗く、電気も点いていない。
手頃な空き教室の前で足を止めた。
誰も居ないと思ったが、一応ドア上部の小窓から中を覗き見る。
やはり誰も居ない。
生きている人間も霊体も居ない。
あるのは隅に積み上げられた古い机と椅子くらい。
そう思って安心してガラリとドアを開けだが……
「キャア」と言う女の子の悲鳴が横から聞こえた。