縛鎖−bakusa−

 


鎖の音と冷たい気配にハッとして、瞑っていた目を開けた。



すると…黒い学生服の彼がいた。



私の上に乗る潤一先輩の真上、

宙に浮かびながら私をじっと見下ろしていた。



目が合うと彼は言った。



『バカダネ…今更後悔して…』



蔑む様な視線を落とされ、その通りだと思っていた。



恋に恋して上辺に騙され、本質を見抜けなかった私はバカだ。



今思えば、おかしいと思えるポイントは幾つもあったのに…



それを無視したのは自分。

後悔しているのも自分。

どうしようもなく愚かだ。




買ったばかりのワンピースが体から離れ、肌が曝される。



気持ち悪い手が皮膚を這い回るのを感じ、震える声で縋ってしまう。



「お願い…助けて…」




なんて虫のいい事を言っているのかと自分でも呆れる。



私は彼を無視し続けた。

「見えるのか?」と聞かれても、

「聞いてくれ」と言われても、

無視を決め込み彼の存在を無い物とした。