縛鎖−bakusa−

 


「あ…の…シュークリーム買って来たので…これ…」


「気を遣わなくていいのに。でも、ありがとう」



私の差し出した洋菓子店のペーパーバックを潤一先輩は笑顔で受け取り、

シューズボックスの上にポンと乗せた。



まだ靴を脱がずに突っ立ったままの私に

「早く上がって」と催促する。



私はシュークリームだと確かに言った。

まさか…このまま玄関に放置する気だろうか?

今は夏。確実に食べられなくなる…



相変わらず白い歯を見せニッコリと笑う潤一先輩に…不信感が芽生えた。



一歩後退り距離を取ろうとすると、

手首を掴まれ「おいで」と命令され、強引に上げられた。



手首を掴まれたまま引っ張られて階段を上る。



潤一先輩って…こんな人だった…?



知り合って数日しか経っていない。

会話もまだまともにした事がない。


先輩を知らないも同然な私がこんな事言うのはおかしいが…

こんな人だった?と思ってしまう。



期待していた人とは違うのかも知れないと気付き始めていた。


強い力で掴まれた手首が痛い…



腕を引っ張られたまま廊下の突き当たりの部屋に入った。


バタンと後ろで扉が閉まった。