何故…と一瞬思うが、そんな疑問、打ち消すだけの理由は幾らでも見付けられる。
家が立派だからと言って、お金に余裕がある家庭ばかりじゃない筈。
自分を納得させて先輩の後ろに従い玄関に入った。
玄関内部も結構豪華だ。
姉の物か母の物か分からないが、ブランドのパンプスが数足揃えて置かれていた。
壁には高そうな現代絵画が掛けられ、
吹き抜けの玄関ホールの天井からは、シャンデリア風のキラキラした照明がぶら下がっている。
玄関の床はピカピカの大理石。
古いタイルの我が家とはえらい違い。
真っ赤なバラが活けられた花瓶は、
半径1メートル以内に入ってはいけないと思う程高そうに見える。
先に靴を脱いで上がり口に立っている潤一先輩を見上げた。
じっと訝しげに見詰める私の視線に気付き、先輩は白い歯を見せニッコリと笑う。
「どうしたの?上がってよ。俺の部屋に行こう」


