縛鎖−bakusa−

 


先輩の家族は皆留守だから気を遣わなくていいと言われたけど、

バス通りの洋菓子店でシュークリームを6個買って手土産とした。



変更された待ち合わせ場所はうちの高校の校門前。


潤一先輩の自宅は学校の徒歩圏にあるそうだ。



夏の暑い日差しに日傘でも持って来れば良かったと思いながら、校門前に立っていた。



今日は雨の気配はない。
カレラの姿もかなり少ない。



少しだけ心配していた。

黒い学生服の彼がまた出て来て余計な事を言うんじゃないかと…



しかし彼は現れない。

鎖の音も嫌な声も聴こえない。



そうして待つ事数分で潤一先輩がやって来た。



「お待たせ。暑い中来てくれてありがとう」



白い歯を見せ笑う先輩は、やっぱり爽やかで素敵だった。



数分歩いて「ここ」と言われた家の前で足を止める。



二階建ての庭付き一戸建て。

築年数の経った古い我が家と比べ、先輩の家はまだ新しく綺麗で立派に見えた。



不思議に思った。

アルバイトをして家にお金を入れていると言った潤一先輩。


失礼かも知れないけど、自宅は古いアパート…そう言うのを予想していた。