朝いつまでも起きて来ない母を不思議に思い、寝室を見に行って…

息をしていない事に私が気付いた。



霊体を無視しろと言い続けてきた母だけど、

実際は陰で彼らの願いを聞いていたのだと、この時初めて気付いた。



彼らの想いを背負い、自らの寿命を一年一年擦り減らして成仏させ、

そして母は祖母よりは少し長生きの41歳で人生を終えた。



うちの家系は代々母系列で強い霊力が遺伝している。

男にはその力はない。

現に三つ年下の弟は全く霊が見えていない。



私も男に生まれたかった…
こんな力、欲しくなかった……




母の出棺の時、しとしとと雨が降っていた。



まるで母の涙の様な悲しい雨…



暗い空、母の涙に濡れて黒く染まるアスファルト。


棺の後に付いて歩く私に葬儀社の人が傘を差し掛けてくれるが、

悲しい雨は私の心まで濡らして行った。



弟は泣きじゃくり、口元を引き結び堪える父の背中もいつもよりは小さく見える。



私は…悲しみも勿論あるがそれより悔しくて仕方なかった。



実体のない彼らに命を削られた母が悔しい。



なぜ彼らの話しに耳を傾けたの…?


あんなに無視しろと私に言ったのに…

どうして彼らの想いを背負ってしまったの…?



まだ新しい高校の制服に身を包んだ私は、黒いリボンで飾られた母の遺影を胸に抱いて誓った。



私は長生きしてやる…

自分の人生を少しだって分けてやるもんかと……





―――――…