怖いと思う理由は他にもある。
いや…他と言うよりこれが一番怖い。
それは歯止めがきかなくなる事。
一人の願いを叶える事で、必死に築き上げ守って来た壁を崩してしまう気がした。
願いを叶えれば感謝されるだろう。
悲しい魂を救済したと…
自分が神にでもなった気分で…自己満足して…優越感に浸って…
それを味わいたくて、二人目三人目と願いを聞いてしまうかも知れない。
母が死んで考えていた。
何故母は私にあれ程「無視しろ」と言い続けていたのに、自分はそうしなかったのかと…
早死にしたい訳がない。
きっと弟の高校入学も見たかっただろうし、
私がいつか花嫁衣裳を着る姿も孫も見たかっただろう。
それなのに自分の命を見知らぬ霊達に分け与えてしまったのはきっと…
歯止めがきかなくなったからだ。


