縛鎖−bakusa−

 


母は私を抱えたまま走り出す。


冷たい雨の中、傘をトンネル内に置き忘れたまま、家に向け走り続けた。



『千歳ちゃん…お願い…』


叫ぶ声だけが後ろから追って来る。



彼と話しをしている間は怖くなかったのに…急に怖くなった。



母の言葉が繰り返し頭の中にこだまする。



ダメなんだ…

お母さんの言う事聞かないと、お祖母ちゃんみたいに死んじゃうんだ…



ダメ…亮介君のお願い聞いちゃダメ……



秋雨に打たれながら険しい顔の母を見つめ、私は誓った。

二度と彼を見ないと。




―――――…


あれから10年が経った今日、

16歳に成長した私は12歳のままの彼に…

とうとう捕まえられた。



『千歳…次に無視したら、呪い殺すって言ったよね?』



その言葉で動けなくなった私。

トンネルの出口まで後数歩なのに…出られない。



呪いなんてハッタリかも知れない。


今まで沢山の霊達に話し掛けられ無視し続けても、呪われたと感じた事はない。

無事に今日まで生きて来た。



けれど、もしかしてと思う恐怖が背筋を凍らせ、無視する事が出来なかった。