久しぶりに人と話しを出来た喜びで泣き止んでいた彼だったが、
可哀相だと同情された事で再び涙が流れた。
泣いてしゃくり上げながら彼は私に頼んだ。
『千歳ちゃんにお願いがあるんだ。
僕はこのトンネルから出られない。
見て、足に鎖が巻き付いて取れないんだ』
他の霊達と同様に彼の右足首にも鎖が巻かれていた。
足首をクルリと一周した鎖は長く伸びて、
その先はトンネルのコンクリートの壁に吸い込まれる様に消えていた。
トンネルに繋がれていると言う事は地縛霊だ。
浮遊霊と違い彼はトンネルの外に出られない。
幼い私は手を伸ばして鎖に触れてみたが、
ひやりとした冷たい空気を感じるだけで見えているのに掴めなかった。
彼は縋る視線を私に向けた。
『この鎖のせいで僕はトンネルから出られない…
だからお願い。僕の母さんに伝えて?
ここに来てって…会いに来てって言って欲しい』
「お母さんに会いたいんだね…」
『会いたい…でもね淋しいからだけじゃないんだ。
僕…お母さんに言わなくちゃいけない事がある。
嘘ついて隠していて…謝らないと…
それがずっと心に引っ掛かって重たいんだ。
この鎖みたいに重たい…』
「そっか…」


