それでもこうして家の中に入れてくれたのは、多分私が女子高生だから。
まだ子供の部類に入る私。
男性ではなく非力な少女。
それが危険性を低く見せた要因だろう。
彼女は私の向かいの絨毯の上に正座をして、探る様な視線を向ける。
「完全に信じている訳ではありませんが…話しを聞こうと思います。
それから判断します」
賢い選択だ。
問答無用で拒絶したら、彼女は今晩眠れないだろう。
もしかして本当だったのではと…
いつまでも気にしてしまう事だろう。
賢い選択をしてくれた彼女に幾らか好感を持つ。
そして私は話し始めた。
亮介君の事を…
トンネル崩落事故の後、再開通したあのトンネル内で初めて亮介君の姿を見たのは私が6歳の時。
それから今まで12年分の彼の話しをした。
12年分と言っても長い時間は掛からない。
その間彼と会話したのは三回しかないのだから。
それ以外は無視し続ける私の前で彼はうずくまるだけだったから。


