相手はしばらく無言だった。
インターホン越しの通話はまだ切られていない。
「お願いです。亮介君の言葉を聞いて下さい。
それを聞けば私が嘘を言っていない事が分かる筈です。
亮介君に頼まれたのだと必ず信じる筈です」
プツリと通話は切られてしまう。
不安になった。
嫌がらせか不審者扱いされて、このドアを開けてくれないのではないかと思った。
もう一度インターホンを鳴らそうと指を伸ばした時、
ゆっくりと恐る恐ると言った雰囲気で、玄関ドアは開けられた。
所々にシワとシミのある肌、白髪混じりのショートヘア。
何と無く疲労を感じる顔。
昨日見た時より一層老けて見えるのは、化粧をしていないせいか…
――――…
リビングに通され勧められたソファーに座った。
目の前には湯気立つ紅茶のカップとお茶菓子。
一見歓迎されたかの様だが違う。
彼女が私に向ける目は不信感に満ちていた。
当たり前だ。
「霊感があって亮介君と話しをした」と言っても、
彼女だけでなく大方の人間は信じないだろう。


