縛鎖−bakusa−

 


翌日、私は学校をさぼり朝から隣町をうろついていた。


家族にバレる訳には行かないから制服姿だ。


寒い初冬の朝、白い息が乾いた空気に消えて行く。



彼の名前は岸本亮介。

生前住んでいた家を探すのは予想より時間が掛かった。



死んでから12年が経ち、彼ははっきりした住所を覚えていなかったのだ。



仕方なく私は霊障覚悟で半透明の頭に触れ、直接記憶の中を探る。



そうして掴んだ自宅とその周辺の映像が今私の中にある。



赤茶のトタン屋根の、我が家とさして変わらぬ古い一軒家。



二階建てで壁はベージュ。
道路に面して狭い庭があった。



周囲も似たような民家が建ち並び静かな住宅街だ。

少し歩いて大きな通りに出ると、急に辺りは活気づく。



有名なドラッグストアと銀行、

レンタルビデオ店にコンビニ、

ホームセンター、スーパーマーケット。



それだけのイメージ情報を頼りに見知らぬ町を探し歩いた。



やっと目的地を見付けたのは正午を過ぎてから。



初めにドラッグストアが目に入り、

12年前の亮介君の記憶の中と現在は幾らかの相違はあったが、大体同じ店が同じ場所に残っていた。