『見えるの?僕が見えるの?』
「…うん…本当はね、見えない事にしないとダメなんだけど…
お兄ちゃん寒いのかと思って…」
彼と話しをした15分の間、人も車も誰もトンネルを通らなかった。
いつも雨の日は霊達で賑わうのに、不思議な事にこの時は私と彼しか居なかった。
誰にも見られていないと言う安心感。
それもつい話し掛けてしまった要因かも知れない。
彼は自分の名前と年齢を言った。
私も「千歳、6歳」と話した。
彼はこの辺の子では無かった。
生前、両親と三人暮らしだった住まいは隣町。
このトンネルで事故に遭ったのはまさに不運としか言い様がない。
トンネルの向こうの親戚の家に母親と二人で車で行き、帰る時に事故に遭ったと言うのだ。
「亮介君…可哀相ね…」
話しを聞きながら自分の背中より大きなランドセルの肩紐を握り締め、幼い私はそう言った。


