古い古いトンネル。
住民以外には忘れさられたかの様なトンネル。
崩落事故の原因は天井のコンクリート板を吊すワイヤーの固定ボルトの劣化。
劣化して錆の酷いボルトはトンネルの上を走る電車の振動で、ある時終に折れてしまった。
ボルトが折れワイヤーが外れ…
天井を形作っていた何トンもある重たいコンクリート板が落下した。
そして…不運の乗用車一台を押し潰した……
乗っていたのは亮介君と母親。
奇跡的に母親は数ヶ所の骨折で命を取り留め…
亮介君は…即死だった。
私が初めて彼の姿を見たのは、事故から半年後。
トンネルの復旧工事が済み再開通した時、彼の姿をここで見た。
彼は泣いていた。
泣きながら通る人々や車に声を限りに叫んでいた。
『お願い!誰か僕に気付いて!ここから出して!』
誰も彼に気付かない。
私と母を抜かしては…
子供が泣き叫ぶ姿に、母は一瞬彼を見ようとした。
しかし…ハッとした顔をして視線をトンネルの出口に向け黙って通り過ぎただけだった。


