縛鎖−bakusa−

 


継ぎ接ぎだらけのアスファルトの小路を歩く。

トンネルに向けて緩やかな上り傾斜を付ける道。



生ある人間は私だけ。
他は…彼らしかいない。




嫌な気分でゆっくりとトンネルに近付いて行く。



誰が置いたのか、トンネルの入口横の草むらには、小さな膝丈の鳥居が設置されている。



朱色の鳥居は雨に濡れ、鮮血の様な赤さで不気味さを助長させていた。



何の意味もない鳥居。

トンネルに足を踏み入れると今日も1、2、3…

げ…13人も居る。



一人はトンネルの真ん中に進路を塞ぐ様に突っ立って、一人は壁から顔だけ出して私を見て…



右に左にウロウロしている年老いた男性は、

歩く度に足首に巻かれた鎖の音を、

ジャラ…ジャラ…とトンネル内に反響させていた。



そう言う霊達に触れない様にしながら、夏なのに冷気漂うトンネル内を歩く。



サァサァと雨が降る向こう側。

雨は嫌いだけど、早くトンネルを抜けてその中に出たいと強く思う。