上原くんのおかげで、衣装は見事に完成し、無事に本番を迎えることができた。

私たちの劇は大絶賛され、たくさんの人に褒めてもらえた。


劇に関わったみんなが、それぞれ自分の持てる力を全部出し切った。


爽快感と感謝。
協力してやり切る楽しさ。

困難を乗り越えて、創り出す喜び。

自分を精一杯表現することが出来たという、ありがたい気持ちでいっぱいだった。

たくさんのことを学んだ文化祭も、こうして幕を閉じた。

私の中で、一生忘れられない思い出になった。





あの日、私のうちまで黙って送ってくれた上原くん。



帰り際に上原くんが言った。

「結、貸し1つだからな。ちゃんと覚えておけよ。」


「何?漫画でも買えばいいわけ?」


「ばーか、そんなのいらねーよ。じゃあな!」



そうして、走っていってしまった。

なんだったんだろう、あれ。
自分の腕を摩りながら考える。


…貸し一つか…。



季節は、冬になろうとしていた。

中学3年生でいられるのも、あと4か月ほどだった。