今日から、文化祭準備期間となった。


放課後、自分の担当場所に移動して、それぞれ作業をした。


私は教室の一角で、裁縫道具を広げて衣装を作り始めた。

裁縫は、昔から好き。
一枚の布から、全く違うものが生まれる瞬間。


自分がそれを創り出せるっていうことに、胸がときめく。

どんなふうにしようかとあれこれ考えていると、あっという間に時間が過ぎてしまう。



「結、そろそろ帰ろうよ。」


「先に帰っていいよ。私、もう少しやっていくから。」


私はみんなの誘いを断って、黙々と衣装を縫っていた。





気が付くと、外は真っ暗。
時間は、6時を回っていた。


いけないっ!もう帰らなきゃ。

急いで帰りの支度をして、玄関まで急いだ。


途中、電気のついている教室の前を通る。


あれ?

一度通り過ぎたけれど、そっと戻って教室の中を見た。


やっぱり…上原くんだ…。


床に広げた大きな白い紙に、一人で向き合い、一心に絵を描いていた。