私の両肩に置かれた手に、力が込められる。

私はたまらず目をあけた。
斜めに近づいてくる矢島くんの顔。


あ、あ、やっぱりダメダメー!


「まっ、まっ、待って。」


思わず私は、声を上げる。


「なんで?」


「できない…。」


私は下を向く。
できるわけがない。


「上原さんは…俺が嫌いなの?」


「そうじゃなくて…まだ中学生だし…。」


「でも、みんなしてるよ。」


「でも、でも、ごめん、もう少し、待って…。」



煮え切らない私の態度に、矢島くんの表情がみるみる変わっていく。


「藤崎だって、海斗だってしてんのに!…っもう、分かったよ!!」


矢島くんは、乱暴に個室から出ていった。


一人残されて、床にペタンと座り込む。



…みんな、するの?…

…上原くんも、するの?
しなきゃいけないの?

ほんとに好きなら、したくなるの?



もうよくわからない。
胸が苦しくて、涙が溢れてくる。


もう付き合えないって言おう。


私の煮え切らない態度は、きっとこの先も、矢島くんを傷つけてしまうから。


キスなんて、なくなればいい…。