俺は手を伸ばす。 どうしても届かない。 一歩前へ。 それでも届かなくて、俺は走り出す。 微笑んだ君は、桜の花のように薄桃色をしていた。 きっと、その唇は、俺が触れたら破れてしまう。 それでも手を伸ばさずにいられない。 待って。 今行くから。 強い風が吹き抜ける。 渦を巻く、桜吹雪の中に消えていく君。 嫌だ、行かないでよ。 俺を置いて…行かないで、ください…。