2冊の教科書を順に目で追いながら、懐かしい時間を思い出していた。


…上原くん、まじめに勉強してたみたい。

ちゃんと私と同じだし…って思ったけれど、あれ?ちょっと違う。





何だろうこの〇印?


私の教科書には、そんな印はついていないし、先生も〇をつけろなんて、言っていなかったような気がするんだけど…?

その先の数ページまでペラペラとめくると、やっぱり同じように〇がある。



上原くんの教科書には、1ページに一つずつ、文字に〇がついていた。


なんとなく、〇の付いた文字を、目で追っていく。



最初は…「ゆ」?


次のページは「い」?


「ゆ…い」?


心臓が大きく音を立てた。

指先が震えて、うまくページがめくれない。


急いで目で追えば、また「ゆ」に〇がついている。

次は「い」に。




その次も「ゆ」

その次は「い」



「ゆい、ゆい、ゆい…」


何度も何度も、教科書が…上原くんが、私の名前を呼んでいる。