上原くんは、いつも漫画を読んでいる。
絵を描くのが好きみたいで、ノートの端にはパラパラ漫画。

新作ができると、最初に私に見せてくれる。
それがとても嬉しくて、いつも楽しみにしていた。

上原くんは、ときどき教科書を忘れる。

これが、なかなか大変だった。
一時間中、上原くんと至近距離。

机をくっつけて、私の教科書を二人の間に置いた。

緊張する。
上原くんが「見せて」と近づく。

肩先が触れるたびに、ドキンと心臓が跳ねる。

私の教科書に、落書きを始める上原くん。
鉛筆を持つ手に気を取られて、授業に集中できない。

ずっと眺めていたい。

上原くんが首を傾げると、私の鼻先に彼の髪が触れた。

髪の毛、いい匂いだな。

身体の中でキュンと音がした。