店の壁と、線路を隔てるフェンスの狭い隙間。


上原くんは、壁に寄りかかるように立つ私の顔の両側に、手をついた。


「こっち向いて…。」


そっと顔を上げれば、上原くんの熱を帯びた視線とぶつかった。



「上原…くん?」


こうしていることが苦しくて、逃げ出したくなる。

私は、上原くんと目を合わせていられなくて、下を向く。



「せまいよ…。」


顔の両側、すぐ横に手があるから、向きを変えることもできない。



「それに…近くて…緊張する…。」



私がそう言うと、上原くんは、わざと顔を近づけてくる。


「もう…だから…近いって…。」



息がかかるほど近くに上原くんの顔。

きれいな長い睫の一本一本まで見える距離。