上原くんは無口だ。
でも、とても優しい。

何でも器用にこなす上原くん。
勉強は苦手な上原くん。

めんどくさがり屋の上原くん。
体育も音楽も美術も…実技教科は完璧な上原くん。



テストが近づくと、上原くんと私の距離は縮まった。

私がノートを貸してあげていたから。

私は上原くんのために、必死でノートをとった。
上原くんに教えてあげるために、頑張って勉強した。


「ここはね、こうなるんだよ。」


「結、すげーな。ありがと。」

「そんなことないよ。」

謙遜するけど、心の中はとても嬉しくて、思わず顔がにやけてしまう。

今まで自分から進んで勉強なんかしてこなかった私が、すっごいやる気になるから不思議だ。


「俺さ、教科書読むの、めんどくせーの。先生より、結が教えてくれんのが、一番わかりやすい。」

「そ、そうなの?」


「ああ、マジで、感謝してる。」

素直な黒い瞳で見つめられると、胸がドキドキする…。

いつからだろう…
上原くんといると、胸がキュッと苦しくなる。

私の顔、きっと真っ赤だ。
もう、顔をあげられない。


「結?どうした?」

「あ、ううん、何でもない…。」

「お前、顔、真っ赤だぜ?
熱あるんじゃねーの?」

上原くんはスッと近づき、私の顔を覗き込む。


「あ、ちょっと、トイレ…。」


私は、いても立ってもいられなくなって、席を外した。

鏡に映る私の顔。
尋常じゃないくらい、真っ赤だった。