― すぐに行く ―


確かにそう聞こえたけれど…。



私は、辺りを見回した。

こちらに向かう人影はない。



でも、確かに上原くんの声だった。

今年のお正月、1月3日以来、7か月ぶりの上原くんの声。



どんなに時間が経っていても、忘れない声。


だけど…本当に上原くんだったのか…。

電話が切れてしまった今では、なんだか夢のように感じてしまう。






そんな私の想いをかき消すように、駅の方から走ってくる人影が見えた。


だんだんと近づいてくるその影。

力強い足音に、胸がギュッとなる。



夢なんかじゃない…上原くんだ…。

気持ちが溢れて、身体から全部こぼれてしまいそう。



息遣いが聞こえる。



近付いてくる…