「代償行為かな。色々な殺しかたが見られる」

開いたページには、モノクロの写真が印刷されている。斬首刑にされた、人の生首がふたつ並んでいる。むろん本物だ。
二人ともまだ若い男性だ。半開きの目と筋肉の弛緩した顔からは、もはやなんの苦痛も恐怖も読みとれない。
それが少し残念だ。


「姉妹本で、『拷問全書』と『自殺全書』もあります」

言いながら、西森が向かいに腰をおろす。


読んだと僕はこたえる。

「『拷問全書』はそれほど面白くなかったな。なんでだろう」


「拷問と死刑。死なない程度の苦痛と、死ぬほどの苦痛の差でしょうか」

西森が小首をかしげる。

夜の闇を思わせる長い黒髪と、月の光を映したような肌の白さが対照的だ。そのなかで唇の赤さがきわだっている。机の上に行儀よく重ねられた手は、小さくきゃしゃだ。



そうかもしれないな、と僕は同意する。