女子生徒のなかには、「ミステリアス」「クール」と僕をみるものもいるらしい。

らしい、というのはそれ以上知るメリットはないからで。つまるところ他人に興味がない。



遠野(トオノ)くんて、死神ついてそう。

一度誰かからそう言われたことがあった。そんなマンガがはやっていた。


なんと返事したかはおぼえていない。

どうせ感じのいい笑顔をつくって、適当なことを言ったのだろう。
 


西森と初めて言葉をかわしたのは6月で、場所は校内図書館だった。彼女のほうから声をかけてきた。



「『カスパー・ハウザー』ですね」


顔を上げると、長机をはさんで一人の少女がたたずんでいた。


どうやって本のタイトルを知ったのだろう。ページを開いているから、表紙は見えない。

僕が棚から本を選ぶところから見ていたのか。
それともたまたま彼女の既知の本なのか。