元々、美佳か聖しか連絡取ってなかったんだ。

その二人がいなくなったのだから、俺にはもう携帯なんて必要なかったから。


だから、引っ越し前に携帯を解約した。

未練なんて何もない。



鳴らない携帯を持って、期待する方が嫌だ。


また、俺を必要としてくれるんじゃないかって。



そんな期待、もう嫌だ。


何も手に入らないなら。
何も手にしたくない。


そうすることが、自分を守る唯一の術だと気付いたんだ。


それから、俺は鈴恵さんに紹介された職場を往復する生活を始めた。
定時に職場を上がって、帰宅する途中でその日のご飯を買う。


自分の部屋に戻って、ご飯を食べて、お風呂に入って、寝る。



娯楽なんてものは俺に必要ない。
自分を戒める為だったのかはわからない。

けど、俺に喜怒哀楽の感情は必要ないと思ったんだ。


そんな生活をしばらく続けた後、俺に一通の手紙が届いた。



手紙なんて来ないから、郵便受けも余り見ない。

チラシが溜まった郵便受けを綺麗にしようと、開けたら中に入っていた。