レンタル彼氏【完全版】

声のした方は、光が眩しくて。
何も見えない。


誰か、立ってることしかわからない。


だけど。


誰だかわかる。



「……泣いて、ないよ」



そう。
手で頬を触るけど、やっぱり泣いてなんかいない。


「ううん、泣いてる」


その光はどんどん近付いてきて。



目の前まで来ると、腕を伸ばす。


俺の胸を、人差し指でトンと突いた。



「…………ここ」


「……え?」



まばゆくて。

顔が見えない。


余りにも眩しくて目を細める。



「…伊織の心が泣いてるの。
ずっと。ずっと」



目を細めた先に見える。
眉を下げて、悲しそうに微笑む君を俺は知ってる。



「………………い、ず、み」



ポタポタと。


何度も何度も何度も何度も。



涙が俺の頬を伝って落ちる。




「………泣かないで」



誰の所為で、泣いてると思ってんだよ。




聖と、付き合って。

俺を忘れたのは、泉じゃないか。