「せ、刹っ?」
私の声に構わず腕を引いて歩く刹。
案内してと言われたのに、私が引っ張られてるんだけど…。
「刹どこ行くのっ?」
返事はない。
すると刹は廊下をくるっと曲がり、階段を上り始めた。
「屋上」
私の問いかけに対する返事だと気付くのに、少し時間がかかった。
短く聞こえたその言葉から、刹はまた無言で階段を上っていく。
そして屋上の扉が見えて、刹は止まることなくそのまま扉を開いた。
心地良い風が顔を撫でる。
空は朝見た時と同じように晴れていた。
刹は屋上の壁を背にその場に座り込む。
そこでやっと私の腕は放されたのだ。
「あいつらうるさい…」
あぐらをかいて顔をしかめる刹。
ちらっと、立ち尽くす私を見上げてきた。
「比乃も座れよ」
「…あ、うん」
言われるがまま、私も刹の隣に座り込んだ。
刹はまた、大きなあくびを1つして。
「…なんかさ」
「何」
刹って。
「猫みたい」
私の言葉に、刹は「はあ?」と声を上げる。
「だってマイペースだし、何考えてるかわかんないし。あ、髪黒だから、黒猫か!」
「お前こそ意味わかんねぇよ」
変な奴でも見るような顔を向けてくる刹。
へへ。
いや、意味わかんないのは刹に劣るよ。
大幅に。
「……あ、チャイム鳴るよ」
「教室行きたくない」
……え!?
「サボるの?!」
「サボるの」
サボるの!?

