「でもさ、こういう時ってどうしたらいいか分かんないんだよね」
私は制服のポケットに手を突っ込む。
「まだ結婚してるわけじゃないし、チャンスはあるって応援したりするじゃない?
でも、その人とその彼女のこと考えたら、奪うなんて最低じゃん」
っていう考えもあるわけ。
こういう時って、ほんとにどうしたらいいか分かんなくなる。
「まあ私の場合、偽善者ぶって小堺には手を出してないけどね」
自分が悪者になりたくないから。
それは、少なくとも人の彼氏に手を出すことを悪い事と思ってる証拠だ。
「今日だって暗かったの、その小堺と彼女のキス現場に居合わせちゃったからなんだけど」
私は笑って話す。
しかし佐久間くんの表情は変わらない。
「藤枝は、それでいいの?」
「ん?」
「藤枝自身はどうしたいの?」
そりゃあ、
「その彼女から小堺のこと奪いたいよ」
でも私は悪者になりたくない。
結果として小堺を傷つける。
奪える自信なんてないのに。

