「お、出て来た」
佐久間くんの視線の先を追う。
そこには黒い猫耳と尻尾を付けた刹が立っていた。
すごい嫌そうな顔をしている。
「……俺帰る」
「な、何言ってんの!すごい似合ってるよ!」
やっぱり刹は黒猫で合ってた。
ほんとに似合ってる。
「……」
「可愛いよ!かっこいいし!」
「…………もっかい」
「へ?……か、可愛い!かっこいい!」
「……」
刹は私から目を逸らした。
…あれ、
もしかして…これ、
「せ、刹……もしかして照れ、」
「「「キャーー!」」」
私の言葉はその黄色い声によって掻き消されてしまった。
……まあ誰だかは予想つく。
「あ、比乃ちゃん」
室谷先輩は私に綺麗な笑顔を向けて手を振っている。
…やっぱり。
私は先輩のもとへ駆け寄った。
「いらっしゃいませです、室谷先輩」
「ハハハ。比乃ちゃん可愛いねー」
先輩は私の服を見渡して言う。
う、恥ずかしい…。
「あ、ありがとうございます…」
「連れて帰りたくなるね」
え!?
きゅっと私の手を握った室谷先輩。
……ていうか女子からの視線が痛い…。
「うちの店の子に手出すの禁止っすー!」
と、掴まれた私の手を引っ張って言ったのは佐久間くんだった。
「お、健斗じゃん。あれ、やけに仲良いね二人」
「中学から一緒なんっす」
「へぇー」
二人はずっとニコニコして顔を見合わせている。
な、なんか立ち入りにくい…。
「ところで、刹くんは?いつも俺が来たら威嚇してくるのに」
そういえば。
くるりと振り返って刹を探すと、
私は目を見開いて驚いた。
「コーヒーデス」
そこには真面目に働く刹の姿があった。