「心中、つまりは
私(わたくし)の思いが貴方に
しっかりと伝わっているものだと……。」

「ああ……そうだったかな。
心中ね……察する……よ。」

僕は曖昧に返事をした。

「本当ですか?
まぁ、その辺の事はよろしいでしょう。
それより言いたいのは
私はこれまで永遠などーーー
この世にあるとは
思っておりませんでした。」

「え、永遠?」

思いも寄らぬ言葉を風見鶏から聞き
僕は明らかに動揺した。

「はて、人に寿命があるように
物にもその朽ち果てる時、
と言うのがございます。」

僕は上をずっと見上げていたせいか、
少し首が痛くなってきたので
風見鶏との距離を図ると
広場のベンチに腰を下ろし、
そして、
再度、風見鶏に注目した。

辺りは建物が入り込んでいるものの
そこだけは空間が開放されていて
お互いの声はよく響いた。

「つまりは私にも何れは
お役御免の日が来ることでしょう。
それは先の震災の際、
私のつい後ろの煙突が意図も簡単に
折れた時のように、突然に
訪れるかもしれません。」

ああ、そうだった。
確か何かの資料で震災の際の
被害状況を見た気がする。
そしてその後の
耐震工事の過程も写真で見たような……。

「私は貴方がひたすらに私に向けて
シャッターをお切りになる姿を見て
日頃は冷たいこの我が身が
熱くなるのを感じました。」

「どうして?」

「永遠はないと言うものの、
これ、実を言えば
寧ろ私はそれにこだわっているのだなと
気づいたのです。
貴方が私の姿を写真機に残してくださる。
その事に私は永遠を見いだそうと
知らずのうちにしていたのです。」

「そう……なんだね。」

と、相づちを打ってみたものの
風見鶏の話は今一、難しくて
正直、ピンとこないというか……。
分かるような分からないような
いや、少しは分かるか?

僕だって永遠に対して
過信はしていない、、、
つもりだ。

僕たち三人の関係がこれから先も
永遠に変わらないとは
思っていない。

だからこそ、
今を大事にしたいと思うし
神山や万由利とも現状維持のまま
上手く付き合っていきたいと
思っている。

別れたのに何ら変わらぬ
元の関係を維持している
器用な二人に対して
僕は決して器用な方じゃないから
万由利に自分の気持ちをぶつけて
上手くいかなかった時の事を考えるとーーー

駄目だ。

やはり、
何も行動を起こせない、
いや、起こさない。

それが
僕の永遠に繋がるのだと
信じているんだ。

神山や万由利と良好な関係を
これからも築いていけるように
やはり僕の万由利に対する思いは
封印するべきなんだ。

それがいい。

その考えが
正しいかどうかは別として。