「えっ、嘘だろ?何で……。」

僕が戸惑っていると

「起きられましたか?
先程はどうも……。」

また、声が聞こえた。

「誰なんだ?どこにいる?」

広場を見渡しても誰一人いない。

「ここでございますよ。
ほら、上でございます。」

声のする方に顔を向けるとーーー
そこには風見鶏があった。

「やっとお気付きになりましたね。」

確かに風見鶏が僕に向けて
話しかけていた。

「これは……夢なのか?」

「何、仰いますか、
夢ではありませんよ。
ここは貴方がお造りになった世界じゃ
ありませんか。」

「僕が?」

「ええ、そうですとも。
貴方が造られた世界でございます。
なので、私(わたくし)は今こうして
貴方とお話させて頂いております。」

「いや、だって……。」

僕は頭が少しクラクラするのは
晴れ渡る青い空のせいなのか
はたまた、
非現実的なこの状況のせいなのか……
それすらも考えが追い付かないでいた。

「とろこで私の姿はいかに?
さぞや、美しゅうに
撮っていただけたのでしょうか?」

「えっ?えっと……その……。」

風見鶏の言ってることがよく分からない。

「ほら、先程、熱心に
撮っておられたではありませんか。
そこからそのこう写真機を構えて……
こうして……えっと……
ああ、もう、動けぬ我が身が
腹立たしゅうございます。」

と、
風見鶏はイライラした口調で
言った。

「動けないって……えっと。」

「ええ、仰りたいこと分かりますよ。
私(わたくし)は昔から勘がようございます。
所詮、お前は鋼(はがね)で出来た、
ただの風向計ではないかと?
貴方は仰りたいのでございましょ。」

「まぁ、そんなところかな。」

「はぁ……。何も分かっておられない。」

丁度、辺りは無風で
風見鶏のその硬く冷たい体はそのままに。
ただ、よく見ると、
唯一、嘴(くちばし)だけ自由が利くらしく
忙(せわ)しげにカチャカチャと
動かしながら言った。

「熱心にこの館をご覧になり
しかも最先端の写真機に
納めておられていたので
てぇっきり、てぇっきり
私の心中、察して頂けたものかと……。」

「心中……?」

僕は風見鶏が何を言いたいのか
本当に分からなかった。
けれど、
なんとも言えない威圧感に
その事を正直にいってはいけない
気がしていた。