二人が付き合い出したと知った時、
僕は目の前が真っ暗になっていくのが
リアルに分かった。
いや、日頃から言いたいことを
言い合って、じゃれている二人を
見ていたら、こういう展開も
あり得るくらい誰でも想像出来た。
それでもいざ、付き合ったと
聞いた時、僕は動揺した。
なるべく二人と一緒にいることを
避けるようにした。
けれどやはり同じ学科に
いるとなると嫌でも顔を会わす訳で
ましてや、入学以来、
どういう訳だか何かと一緒に
つるんでいたものだから
急に他人の様にって訳にはいかない。
だから
僕は耐えた。
雪国の人間は我慢強く出来ている
と言うのが、僕の持論だ。
あの厳しい冬の事を思えば
こんな一時の感情なんて……。
たった二ヶ月の間に僕は
冬の厳しさよりも冷たく凍り付く
世の中もあるもんだなと
この時、初めて気づいた。
「俺、阪急で帰るわ。
梅田で探したい本があるねん。
阪急の方が降りて直ぐ本屋行けるしな。」
僕がぼんやりと考え事をしていると
不意に神山が言った。
市役所の食堂で遅めの昼食を
済ませた後、
山側に向かってらりぶらりと
三ノ宮駅まで、やって来たところ
神山が言ったのだった。
丁度、駅の時計は3時を
少し回った所だった。
まっすぐ帰るにはまだ時間もある。
「えっ、じゃ、僕も付き合うよ。」
僕も見たい本があったしそう言うと
「いや、ええよ。
万由利もお前もJRの方が便利やろ?」
「えっ、でも……。」
「人の好意を無駄にすな。」
と神山は僕に耳打ちすると
「じゃっ、そう言うことで。」
後ろ手振りながら歩き出していった。
神山の突然の好意に僕は戸惑いながらも
隣にいる万由利を伺うと
「神山ぁ、明日の朝イチ、住居学論
ちゃんと来ないと単位ヤバイからねぇ。」
と、
一段と高い声で神山の後ろ姿に叫んだ後
「切符買ってくるわ。」
と、券売機へと向かった。
急に二人きりにされて
動揺しているのはどうやら
僕だけの様だった。
僕は目の前が真っ暗になっていくのが
リアルに分かった。
いや、日頃から言いたいことを
言い合って、じゃれている二人を
見ていたら、こういう展開も
あり得るくらい誰でも想像出来た。
それでもいざ、付き合ったと
聞いた時、僕は動揺した。
なるべく二人と一緒にいることを
避けるようにした。
けれどやはり同じ学科に
いるとなると嫌でも顔を会わす訳で
ましてや、入学以来、
どういう訳だか何かと一緒に
つるんでいたものだから
急に他人の様にって訳にはいかない。
だから
僕は耐えた。
雪国の人間は我慢強く出来ている
と言うのが、僕の持論だ。
あの厳しい冬の事を思えば
こんな一時の感情なんて……。
たった二ヶ月の間に僕は
冬の厳しさよりも冷たく凍り付く
世の中もあるもんだなと
この時、初めて気づいた。
「俺、阪急で帰るわ。
梅田で探したい本があるねん。
阪急の方が降りて直ぐ本屋行けるしな。」
僕がぼんやりと考え事をしていると
不意に神山が言った。
市役所の食堂で遅めの昼食を
済ませた後、
山側に向かってらりぶらりと
三ノ宮駅まで、やって来たところ
神山が言ったのだった。
丁度、駅の時計は3時を
少し回った所だった。
まっすぐ帰るにはまだ時間もある。
「えっ、じゃ、僕も付き合うよ。」
僕も見たい本があったしそう言うと
「いや、ええよ。
万由利もお前もJRの方が便利やろ?」
「えっ、でも……。」
「人の好意を無駄にすな。」
と神山は僕に耳打ちすると
「じゃっ、そう言うことで。」
後ろ手振りながら歩き出していった。
神山の突然の好意に僕は戸惑いながらも
隣にいる万由利を伺うと
「神山ぁ、明日の朝イチ、住居学論
ちゃんと来ないと単位ヤバイからねぇ。」
と、
一段と高い声で神山の後ろ姿に叫んだ後
「切符買ってくるわ。」
と、券売機へと向かった。
急に二人きりにされて
動揺しているのはどうやら
僕だけの様だった。



