恋を知らない人魚姫。


もう一人は休み……。

その言葉を聞いて、何だか力が抜ける……というより、

「愛海がよく手伝うって言わなかったね」

ふと、そんなことを思ったか。

あたしが当番の時ですら、手伝うと言ってくれた愛海。

櫻井くんと同じクラスで、しかも彼に片想いをしている愛海が、委員会を知らなかったとも、申し出なかったとも思えない。

だけど、ここに愛海の姿はなくて。

バッタリ鉢合わせとかにならなくて、ホッとした……のも束の間。

「愛ちゃんならさっきまで一緒にいたよ」

耳に入って来た櫻井くんの声が、あたしを一瞬にして凍らせた。

「……」

言葉なんて出て来ない。
何をどう考えたらいいのかも分からない。

ただ脳裏に浮かんだのは、櫻井くんに笑いかける愛海の笑顔。


……そっか。

ほんの少し時間を置いて、あたしはやっと理解した。

やっぱり愛海は残っていたんだ。

だから今日一緒に帰れないと言ったあたしに、何も言わなかったんだ。


櫻井くんとふたりでいたかったから。