恋を知らない人魚姫。


「……何であなたがここに座ってるの?」

彼の前まで真っ直ぐ歩いて行ったあたしは、低いトーンで問いかけた。

見るからに、図書室内には他の生徒はいなさそう。
それはすごく助かることだけど、彼がカウンターに座っているのは何だかとても不快だった。

図書委員の人をどうやって追い払ったんだろう……と、眉を寄せると、

「だって俺、図書委員だもん」

両肘を机に付いて、重ねた手の甲に顔を乗せた櫻井くんは、満面の笑みでそう言った。

「図書……委員?」

「そ、やっぱり知らなかったんだ」

馬鹿にするみたいにフッと鼻で笑われて、ムッとする。

知らなかった……って、あたしあなたに興味ないし。

そんな言葉を飲み込んで、

「じゃあ、もう一人は?」

更に眉を寄せて、あたしは聞いた。
図書委員なら、どこのクラスにもふたりいるはず。

すると櫻井くんは、

「今日休みだったんだ」

勝ち誇ったような笑顔で言った。