恋を知らない人魚姫。


そして、放課後。

あたしは少し屋上で時間をつぶした後、図書室へと向かった。

すぐに向かわなかったのは、図書委員の経験上。

もともと人気なんてほとんどない場所だけど、時間が過ぎれば過ぎるほど、人の姿が少なくなる。

あたしと櫻井くんが一緒にいるところ……出来れば誰にも見られたくなかった。


それから、わざわざ屋上にいた理由はというと、教室の居心地が良くないことと……愛海の目から隠れるため。

「今日は先に帰ってて」と、授業の合間の休憩時間に伝えた。
それなのに、教室にいるところを見つかって、「何してるの?」と聞かれてしまったら、困るから。


……そういえば、先に帰るように言ったあたしに、愛海は不思議と理由を聞くことをしなかった。

「分かった」と、ただ頷いただけ。

あたしからしたら、それは助かることだったけど、どうしてだろう。
いつもなら絶対「何かあるの?」とか、「待つよ」とか、言ってくれるのに。

時間がなかったから、そこまで気にする余裕がなかったんだろうか。


そんなことを考えているうちに、あたしの足は前へと進んで、図書室の前まで来ていた。