恋を知らない人魚姫。



それは、屋上から教室へと戻ってすぐのこと。

席に着こうとした時、ポケットの中で何かが小さく震えた。

取り出さなくても分かる、それはケータイで。

実際に手を取り開くと、【新着メール1件】の文字。


愛海かなと思いながら、メールを開く。

だけど、そこに表示された名前に、ビクッと肩を跳ねあがらせた。


【櫻井拓也】


何で……って、一瞬頭の中が真っ白になるけど、

そうだ。
昨日、電車の中で取り上げられ、勝手に登録されたんだっけ。


「……」

微かに震える指先で、もうひと段階操作する。

すると、メールの内容が表示されて。


【放課後、図書室に来て】


たったひと言の、用件だけのメール。

それはとてもストレートに頭の中に入って来て、気分が悪くなった。


一旦席に着いて、小さく呼吸を整える。

どうしようもなく苦しい感情に襲われながらも、あたしは【どうして?】と、返信した。