彼から貰ったストラップを付けることで、苦い思いをしている反面、ひとつ心が軽くなることもあった。
ストラップを返すために、彼に会わなきゃと思っていたあたし。
でも、返すものがなくなった今、会う必要もなくなった。
図書委員もない、クラスも違う、明日も学校。
愛海と一緒にいるところに彼が来たり、廊下ですれ違ったりすることはあったとしても、ふたりきりになることはないはず。
「海憂も何かいいことあった?」
「え?」
「何だか今日は表情が柔らかいから」
愛海の指摘にキョトンとして、ふっと目を細めた。
無邪気に話す姿を見る限り、昨日のことに関して、櫻井くんも余計な事は言ってないみたい。
「ちょっとね」
あたしが言うと、
「え、何なにっ!?」
気になるとばかりに、こっちへ身を寄せる愛海。
「大したことじゃないよ」
あたしは言いながら、愛海のお弁当のウインナーを箸でつまんで、自分の口の中へ入れた。
彼のせいで、ずっと感じていた緊張感。
今日はそれから解放されているような気がしていて、気分がとても良い。
「あっ、あたしの!」
ショックとばかりに声を上げる愛海に、“美味しいよ”と笑顔を向けた。
久しぶりに楽しいふたりの時間。
この時間が少しでも続くと思ったあたしは……馬鹿だった。



